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March 27, 2005

歴史1 【立川の経石】

kyouseki東京都立川市の臨済宗寺院普済寺の、金堂再建にともなう遺跡発掘調査で発見された経石です。江戸時代に建てられた庫裏の大黒柱と玄関の柱穴から出土しました。
経石というのは、墨で小石に経文を書き付けたもので、庶民の民間信仰として、中世以降全国にひろまりました。
埋経という習慣は、藤原道長が紺地の立派な紙に経典を写し、金銅製の経筒に納めて吉野の金峰山に埋めるなど、もともとは貴族からはじまった信仰形態ですが、誰にでも入手可能な「石」という素材に経文を書き付けるようになったとき、民間のものとなったのでした。
立川の経石は全部で2500個。法華経、金剛経、観音経、陀羅尼など、数種の経文が書かれていました。それがばらばらに混ぜ合わされて、二つの柱穴に分けて入れられていました。奇しくも有難いご縁をいただき、私がその調査を担当させていただきました。つまり、江戸時代の人が願いを込めて振り分けたものを、また私がもとの経典どおりに戻す作業をしたのでした。
最初はどの経典が選ばれているのかもわかりませんから、「須菩提」など経典固有の言葉を手がかりに割り出しつつ、半年、寝ても覚めても、経典と石に書かれた文字を見比べる作業だけに没頭して過ごしました。
五十六億七千万年ののち、この世に現れて衆生を救ってくださるという弥勒菩薩さまを信じて、それまでのあいだ尊い経典を地中に埋めて守り、救われたいと願いを託したこの風習を、とても美しいと思っています。

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