« 地震雲15 【消えない夕焼け 2】 | Main | 地震雲16 【宮城県沖M3.8】 »

March 03, 2005

写真1 【小さな写真の歴史】

50303seagal052押入れの整理をしていた母が、「こんなのが出てきたの」ともってきた書類の古い束。「なあに、それ?」と訊くと、「光画の記録とかよ」といいます。光画というのは光画研究会という父が主宰していた写真同好会の通称です。父はすでに他界していますが、秋山正太郎氏と同世代の、いわば日本における写真草創期のカメラマンでした。フリーで活動する傍ら、自宅で営業写真店を営み、そこを集いの場として写真同好会を立ちあげたのでした。お店の名は「光芸社写真部」。写真部とつくからにはほかに部がありそうなのに、ありません。こども心にいつも不思議に思っていました。何回か母に訊いたのですが、「さあ、なんでも、どことかの偉い方が、君の店なら光芸社がいいだろうとつけてくださった」とか。写真店は副業で、父の理想はあくまでも写真芸術そのものの探究にありましたから、それを知ってくださっている方の命名ということでした。けれど、どうたずねても、それ以上の進展はありません。どこのどういう方か、まったくわかりませんでした。それが、昨日みつかった書類のなかに名簿があり、「なあに、このシーガル会って?」とまた母に訊くと、「パパが所属してた会よ。パパはこういう会でいろんな方と知り合って道を開いてたの」といいます。「光芸社写真部もこの関係でつけていただいたのかも」となりました。私はやっと、今まで雲をつかむような話でしかなかった名前の由来に、根拠がみえた気がしたのでした。
シーガル会というのは、オリエンタル写真工業株式会社主宰の写真同好会です。通称「オリエンタル写真」の会社の印画紙が「シーガル」で、会の規則のひとつにその印画紙を使った作品というのがありました。父は先進的な人でしたから、カラー写真が普及するよりもずっと前に興味を示し、みずから現像を試みたりしていました。そういう父にオリエンタル写真の営業の方が肩入れしてくださっているのは、しょっちゅう訪ねてこられて、楽しそうに長々話していかれるので、小学校低学年だった私にもなんとなくわかっていました。「そうよねえ。シーガルって紙があったのよね・・・」と懐かしく思いだしました。私が中野坂上にある写真短期大学(現東京工芸大学)にすすんだときは、もう世の中は「月光」と「フジブロ」の二辺倒(?)になっていて、どちらを使うかは各自が現像したときの色調の好みで決めていました。酸化した銀の発色がメーカーによって微妙に違うのです。「月光」はすこし青みがかったやわらかい黒、「フジブロ」は褐色系のかちっとした黒。「フジブロ」は適正範囲が広くて割と簡単にいい現像ができるけれど、「月光」は適正露光でしあげないと本当にいい色はでない・・・、でも最高にしあがったときの色は抜群・・・・・・。好みは人それぞれで、みんなが頑固に「私は・・・」「俺は・・・」と譲らないのも、小さなプロ意識の現われで可笑しかったです。私には内心「シーガル」への郷愁があったことを、こんな今になって確認したのでした。

|

« 地震雲15 【消えない夕焼け 2】 | Main | 地震雲16 【宮城県沖M3.8】 »

Comments

ばーこさんも現像なさってたんですね。いいですよねえ、あの暗室のなかの何ともいえない不思議な神秘性。多分もう絶版になっていると思いますが、TOPページに載せている『潮香』所収の「まほし、まほろば」という短編に、現像の一部始終を細かく書きました。そのとき立松和平先生が文学賞の選者でいらして、先生も高校時代暗室に籠もったことがお有りとか。それでその気持がよくわかると、強力に押して下さったのでした。「一つの時代の終わり」ってこと、私も凄く感じます。だから、せめて写真の良さを知り尽くしている私が、できる範囲でのことを書き残しておきたいという使命感のようなものがあります。
なのに、ここのところの地震。今も福岡の地震についてブログに載せようと準備してたところです。二兎を追ってるから、いくら時間があっても足りません。読んでくださって有難う!

Posted by: ゆりこ | April 20, 2005 14:58

 感動ですね~。私も30歳の頃、1人で暗室にこもって、写真焼いていた事があるので‥。
 神戸の元町の「サントス」と言う2階建ての喫茶店の2階窓際で、いつもカフェオレを頂きます。
 道をはさんで向いに「ヒラマツカメラ」と言う、多きなカメラ店があって、そこでいつも印画紙や定着液など、購入していました。
そのお店には沢山の中古アナログカメラもありました。
 そのお店が5年ほど前、突然無くなってしまいました。‘1つの時代が終わったなぁ‘と、寂しく思ったこと思い出しました。

Posted by: 最近ばーこが一杯ですネ。 | April 20, 2005 14:23

The comments to this entry are closed.

« 地震雲15 【消えない夕焼け 2】 | Main | 地震雲16 【宮城県沖M3.8】 »