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2008.3.24 八王子城御主殿跡遺跡出土のベネチア製レースガラスのこと

 先日、東京中世史研究会主催の八王子城御主殿跡遺跡出土の遺物を含めた見学会があって参加しました。

 八王子城は戦国時代に後北条氏の北条氏照が築いた、「関東屈指の山城」です。お城というと、ふつう姫路城や熊本城のような天守閣のある壮麗なお城を想像しますが、山城という種類があるのを、私も遺跡調査の仕事についてはじめて知りました。世の中には思いもよらずに知らないでいることが多いですね! そこには、攻められても大丈夫なことを前提にして造られた戦国時代の山城。平和になってから造られた近世の平城、という歴史の推移があるようです。
http://www.asahi-net.or.jp/~ju8t-hnm/Shiro/Kantou/Tokyo/Hachiouji/index.htm
http://www.city.hachioji.tokyo.jp/kyoiku/rekishibunkazai/004416.html

 でも、山城は、遺跡調査にかかわる人なら誰もが熟知かというと、そうではなくて、たまたま携わった遺跡の調査員のお一人にその世界では有名な山城マニアの方がいらして、その方のご教示で私もちょっと人よりは詳しく・・・という経緯です。

 山城は、ふつうのお城が平地に聳えているのに対して、文字通り山の上に建てられています。山の上ですから当然平地がないところを、山を崩して平場(ひらば)を造り、そこに城を築きます。この平場は、建物がなくなった今でも、山としては不自然な形で残っているので、先ほどのマニアの調査員の方によると、「電車に乗っていて、窓から見てても、あ、あれは山城だ!!」とわかるそうです。慣れてくると、私でも「そうかも・・・」くらいにはわかります。だって、ピラミッドのように垂直に天へ向かって収束していくはずの山肌の一部が、人為的に削られたとしか思えない、妙に平たい部分があるんですから。こうして見ると、小さい規模を入れると、相当な数の山城が中世にはあったようです。

 八王子城は、天正18年(1590)、豊臣秀吉軍のなかの前田利家・上杉景勝軍に攻められて落城しました。たった一日の決着だったそうです。城主が住んでいたお城には女性もたくさんいましたし、悲話はたくさんありますが、ここには書かないでおきます。

 その御主殿跡の発掘が行われて、そこから大量の陶磁器などの遺物が出土しました。なにしろ、たった一日での落城ですから、逃げるとかの持ち出す機会が失われて、生活していたそのままの状況で遺物が残った訳です。もちろん、落城時の混乱とその後の推移で、焼けたり、壊れたりし、失われたものも大量ですが。

 その御主殿跡から発見された遺物のなかに、なんと、ベネチア製のレースガラスがあったんです!!  これは、中世のこの時代に、八王子城のなかで、こんな輸入品を愛好していたということ。中世史ご専門の方も驚かれたような交易史上の大変な証拠です。
http://hachipo.com/modules/tinyd4/index.php?id=7
http://www.la-gatta.com/venetian/history.html
http://www.venetianbazaar.com/gallerielavorazioni/filigrana%20zanfirico.html

 私はたまたま八王子城を掘ってらした調査員の方と知り合いだったので、八王子市郷土資料館で「発掘された八王子城」という展覧会が開催されたとき、その図録に載せる陶磁器の写真を撮らせていただきました。そのときに、はじめてこのレースガラスと対面し、感慨深かったですね・・・

 このレースガラスを発見された調査員の方とも懇意にしていただいていますが、最初は「まさかそんな大変なガラスだなんて誰も思わないから、単なる雑魚として捨てられるところだった」そうです。でも、その方は陶芸とか骨董品とかに趣味が広くて、さらにガラス好き! 一目で「ベネチアンガラス」と閃いて、捨てる行為にストップをかけられたとか。

 よかったですね・・・。その方がいられなかったら、この発見は永久に闇に消えてしまうところでした。調査員て、カッコいいお仕事ですが、趣味が広くないと目が利かない・・・、知らないと必要なものも見分けられない・・・で、大変なお仕事です。その分、冥利に尽きることもたくさんお有りですが。

 話がそれますが、学芸員さんのお仕事もそうで、金沢文庫の文庫長をしていらした真鍋俊照先生からも、そういう捨てられるはめになったものが重要文化財級の発見になった危機一髪のお話を何度か伺いました。趣味はたくさん持つべきですね。絶対に人を深くしてくれます!!

 八王子城の遺物について書いたら、撮影した陶磁器たちのことも書きたくなるのですが、今日はベネチアンガラスでまとめました。先日の見学会では、その陶磁器たちと再会できて楽しみました。眺めるだけで、撮っていたときの感触が手に甦るんです。旧知の調査員の方々とも久しぶりにお会いできたし、いい日でした。『雑兵たちの戦場』を書かれた藤木久志先生も参加されていて、私もこのご著書には目から鱗のような感慨を抱かせていただきましたのでこれについても書かせていただきたいのですが、またの機会にします。ただ、先生が「雑兵」から抱いていたイメージから遠い、とても繊細そうな上品な方だったのに驚いたことだけを付しておきます。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~hampton/read007.htm

織田百合子Official Webcitehttp://www.odayuriko.com/

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