2010.6.12 ひっそりと撫子の花が咲いていました・・・撫子は玉蔓の幼名です。
はかない風情の撫子におよそふさわしくないシチュエーションで撮ってしまいましたが、忙しくしているあいだにいつのまにか咲いてくれていた撫子の花・・・。忙しさにかまけてカメラも取り出す時間がなく、6月に入ってからというもの、趣味の写真も撮れずにいました。
ほんとうはもっとゆとりをもってこの撫子さんも撮ってあげるべきなのですが、「とにかく撮る」を優先してシャッターを押しました。なんだか忙しくて風情・・・とは程遠い境地に今私がいることの証明みたいな写真です。撫子さん、許してネ!
撫子の花がほんとうに好きです。野の花としての撫子が好きなんですが、それとは別に撫子は『源氏物語』では夕顔と頭中将のあいだにできた女の子の名前になっていて、それも好き。光源氏が夕顔に惹かれて通っているころ4歳だった「撫子」・・・、六条御息所の生霊に母夕顔が殺されて一人残され、乳母と一緒に筑紫に下って成長します。
美しく成長した少女は、むくつけき土地の豪族に求婚され、頭中将の娘ということを知っている乳母は「とんでもない」とばかりに京へ連れ帰ります。そして、偶然、光源氏のもとに仕えていたかつての夕顔の侍女と会い、光源氏に引き取られる・・・。それが玉蔓という女性です。
六条院での玉蔓の華やかさは『源氏物語』中でもきわだっていて、「玉蔓十帖」として独立するほどの内容で書かれています。そして、玉蔓になってからの彼女を象徴する花は山吹。あの輝かしい際立った色が彼女の若さの溌剌さを象徴するかのよう。
面白いですね。薄倖の少女「撫子」は美しく成長して「山吹」になる・・・、私は山吹も好きで、庭には黄色と白と二種植えていますが、繁茂することの凄さ。放っておいたら山吹御殿みたいにおどろおどろしくなりかねない勢いです。撫子のいつまでたってものひっそりさと大違いです。