1月9日
鎌倉の源氏物語は平家の輝きを抜きにしては語れないのだけれど、ここのところ鎌倉にどっぷり漬かっていたから光行さんと平家の方々の交流に気分が戻れない。実時の自筆問題を終えてこれから光行さん、その後は仙覚さん。この短い原稿に走馬灯のように今までの人が登場する。それぞれが輝きますように。
自筆問題だけで論文的に終始するかと思ったら、突然色合いの違う光行さんの出番となって、今日は平家の資料と格闘です。でも、かつて輝いていたあの頃の光行さん気分が書けたら素晴らしい! (自画自賛でなく、平家の文化が素晴らしいんです!)
熱で体調がすぐれず終日寝てました。が、頭のなかはぐるぐるどうやったら平家と光行さんのことが上手く書けるかしらとそればかり。夜になって少し体力が出たので原稿に向かったら定家と光行が一歳違いの文学の同士で平家の王朝文化の恩恵を受けて育ったと。そこから書いたら進みました。
つまり定家の「青表紙本源氏物語」と光行さんの「河内本源氏物語」は平家の方々を偲ぶために成された写本だったということが重要と。平家が滅びたために光行さんは鎌倉に下り、それで鎌倉で「河内本源氏物語」が作られ、定家は京に残っていたから京都で「青表紙本源氏物語」ができたという構図。
一時は二大写本とまでいわれた「青表紙本源氏物語」と「河内本源氏物語」が、平家の王朝文化のなかで育った一歳違いの文学的感性鋭い二人により成されたということ。これはたまたまではなく、二人のうちにある平家の方々への鎮魂あってこそのことと。(やっと熱い思いが甦ってきました。)
1月10日
昨夜無事に光行さんと平家の関係を書き終わりほっとしたのも束の間、光行さんの鎌倉下向になったら今度は承久の乱や伊賀氏の乱、頼経の代になっての宮騒動など波瀾万丈の歴史が控えていた事に思いが至って茫然。全部書いたら枚数オーバー。鎌倉の源氏物語は余程世情と表裏一体です。
こんな事を忘れてるなんてと唖然としました。最近一つの事(最近では蘭渓道隆)に集中していると他の事に気が回らなくて、それが全くの忘却で頭のなかは白紙。昨夜みたいに思い出すと芋づる式に甦るのですがほんとうに唖然とします。自分のなかで舞台の暗転が起きてます。
4:09の未明の地震M3.6、私は眠っていたけど娘が起きていて、ママ、地震と。どんと音がして揺れたと。音は二回したと。TVをつけても速報がなく、娘が調べたネットでもわからず、地震でなかったらなんなのだろうと不安でした。震源地の杉並区は隣接なので音がしたらしい。嫌な感じです。
鎌倉の源氏物語はありとある中世の内乱をくぐります。光行さんと親行を書いていて承久の乱と伊賀氏の変を書き、もうすぐ仙覚さんの登場だなと思った時に、あれ、比企の乱はどこに?と。そうなんです。光行さん系統の事跡では比企の乱は入ってこない。仙覚さんの事跡はまったく別に流れていました。
これが源氏物語と万葉集という二系列なんですね。比企の乱の年に生まれた仙覚さんは成長して源氏物語の系統に入ってきます。仙覚さんと親行さんが合流するところから見えてくるのが《鎌倉の源氏物語》です。
鎌倉の源氏物語の原稿は仙覚さんが登場して佳境に入ってきました。眠くないし乗っているこのまま続けたいけれど寝ることにして今までの分を印刷。校正しながら休むことにします。それにしても鎌倉の源氏物語の波乱万丈たるや凄い。そしてその華麗な人脈も凄い!。目も眩むばかりの壮大なドラマです。
鎌倉の源氏物語は世の動乱をかいくぐって生きた人たちの大切な遺産。いつの時代も人は世情に翻弄されるしかないけれど、それでも必死にみんな生きてきました。その証の一つが『源氏物語』の二大写本。悲惨さが繰り返されませんように。
1月11日
鎌倉の源氏物語の原稿、正嘉二年に実時が完成したばかりの「河内本源氏物語」を親行から借りて書写したところまできていよいよという思いで興奮状態。しなければならない仕事もあるのにこのまま書き進みたくて日常生活にも気がいかず困っています(笑)。あとは一気に結論へ、です。
鎌倉の源氏物語の原稿、終わりました。20枚だからこれくらい。最終的に題を「鎌倉で作られた高貴な『源氏物語』の写本」としました。論考はまったくのサスペンスだから書いているあいだの謎解きしてゆく興奮がまだ鎮まりません。これから家事の日常に戻って頭を冷やします。
1月12日
NHK朝井リョウさんと東出昌大さんの対談、なんとなく観ています。手が回らなくて読めないし映画も観られないけど、朝井リョウって作家さんはなんとなく気になって見ます。年を重ねたり研究を重ねたりすると例えばツイッターの字面でさえしかつめらしくなる。それを警戒するのにお手本のような。
エゴサーチってネット上で検索して自分がどう思われてるかを知ることらしいけど、二人ともスルと言われてた。落ち込むよなって。そこに朝井さんが、世の中には幸せにしたい人とさせたくない人がいて、したい人は黙って見てる。させたくない人が悪い事を書き込むんだよねって慰めると。うん、と思う。
さわやかな若い人の対談て、いいなと思いました。さわやかにいこう!と。